ゆうが語る、フォークロア
私の実家の斜め前に大きな賃貸マンションが建っています
なかなか素敵な外観なのですが、いつしかここのマンションの4階の隅の部屋には
幽霊が出るらしい・・と言う噂が立ちました。これは私の従妹から聞いたのですが。
銀行を辞めた後、彼女は不動産屋でアルバイトをしていました。
彼女の仕事は、賃貸のマンションやアパートで入居者が引き払った後 、
敷金の返還のために部屋の汚れや損傷を確認して、金額を計算するというものです。
彼女がその不動産屋に勤めてまもなく見覚えのある住所が、、見
るとゆうの家の向かいではないか、、
ということで仕事の帰りに私の実家に立ち寄ったのです。
仕事の引き継ぎを受けた会社の人から、
今度の物件は幽霊が出るからね〜と脅されていたそうですが
その部屋は、一番長くて2ヶ月しか住人が居着かないのだそうです。
早くて一週間、次々に住人が変わるというのですね。
なんの幽霊が出るの?と聞くと、血まみれの女が毎晩出るっていうのです。
私は家賃をうんと安くしてくれるなら借りてあげてもいいよ・・・
と言ったらヘンタイ扱いされました。
さて、これは私がとても気に入っていたU君の話です。
U 君は、デザイナー2年生。ほれぼれするほど美形で、いい男です。
しかし大変残念なことに、彼はおっちょこちょいでまぬけでした。
黙って煙草を吹かしていると絵になるのですが・・・。
その彼がある日、心霊スポットに行って恐怖の体験をした話を聞かせてくれました。
彼はテレビの心霊番組で紹介された、幽霊が出るというので有名な病院へ
友達と探検にいったそうです。
真夜中の廃虚になった病院へ、彼らは勝手に入って行ったのです。
何にも出ないじゃないかと騒ぎながら病院の中を歩いていたら、
U君は突然足を何かにつかまれたのです。そして、前に進むことが出来なくなって
しまいました。
先を歩いている友達を大声で呼んだら、なんだよ〜と友達は戻ってきてくれたのですが、
彼が指差す足元を見た友達は、「うわぁ、出た!」と言って、
彼をその場に残してクモの子を散らすように逃げてしまったのです。
暗闇の中で一人残されたU君は、とりあえず煙草を出して火を付けました。
煙草を吸ってとにかく落ち着かなきゃと思ったそうです。
「煙草のヤニが嫌いなのは河童じゃなかったっけ・・?」
私は彼の話を聞きながら、茶々を入れました。
「チョ〜怖かったっス」彼は青ざめた顔で私を睨みました。
彼の足をがっしりとつかんで離さなかったのは、床からはえた2本の腕だったのです。
煙草を吸いながらもがいているうちに、
これも突然、手が離れたので彼は必死で逃げました。
やっと建物の中から出てくると、友達は一応、待っていてくれました。
その後、あらためて恐怖が膨れ上がった彼らが逃げ帰ったのはご想像どおりです。
私は彼の話を聞いて可笑しくてたまりませんでした。
誰だって真夜中に、騒ぎながら自分の家に入ってこられたら迷惑だし、
腹を立てますよね。
あの世の人だって、それは同じじゃないでしょうか。
私は病院に今もいるかもしれないその人達に同情します。
それでは、また明日の晩お目にかかりましょう。
おやすみなさい。
ここで、お話を聞いて下さっている皆さんにも、一休みして頂きましょう・・。
昨日、一昨日と、寝室のランプが勝手に点灯しているという「事件」がありました。
このランプは手でタッチして、通電しないと点灯しないタイプのものなのですが、
困ったことに、意志を持ったかのように明かりが灯っていたのです。私は、
しょうがないなぁ、電気代がもったいないなぁと見えない相手に文句を言いました。
先日は、別の部屋の消したばかりの室内燈が煌煌とついていました。
カーテンを引く音がかなり派手に聞こえたり、家の中でどすどす物音を立てたり・・・・
窓がかってに開いていたりとか、日常生活の中でいろいろあります。
まったく、賑やかなことといったら・・・。でも、この程度なら可愛いものですよね。
笑って済ませることができますから。
こういう話をすると、まったくこのたぐいの話を否定するか、思い込んで信じるか
二通りのタイプの人がいるように思えます。
私の場合は、否定するよりも、あの世があると考えた方が
合理的なので受け入れています。
ただし、ご先祖の因縁とか、祟りとか、滅多にあるものではないと考えています。
だから、人の心の弱みに付け込んで、因縁や祟りを謳い
「商売」をする宗教家を名乗る人々を私は軽蔑します。
また、努力なしに安易にそれらに逃げ込もうとする心の弱い人には、同情しません。
誰だって辛い時がありますよね。
そして、それを人のせいにしてしまえば楽なこともあります。
でも、自分としっかりと向き合わなければなんの解決も見出せない、
それが真実だし、現実だと思うのです。
私はあの世の人々に限りない愛情を抱いています。
いつか、自分もそこへ行くわけですしね。
たとえあの世がなくて、無になったとしても、生命活動の行く末として
それはそれでいいと考えます。
要は、物事にとらわれる心が自分の中に地獄や極楽を産むわけですから。
それがわかれば死は恐れるものでも忌み嫌うものでもないと思うのです。
自分の生活の延長の、ある一つの通過点に過ぎないのではないでしょうか。
私個人としては、いつかお迎えが来て、優しかった母に会えるのを楽しみにしています。
それまで、せいぜいいろんな事を考えながら生きていこうと思います。
生きていくことは素晴らしい!
それでは、またの機会までごきげんよう・・・。
この話は、クライアントの営業の人から徹夜仕事のつれづれに聞いた話です。
その人は、自分は合理的な人間だから、幽霊のたぐいは一切信じないのだが、
という前置きで始まったその話とは・・・・・・。
念願の一戸建てを買い、一家は幸せでした。
ところが、奥さんが次第に無口になり、食事も満足に取れなくなってしまったのです。
奥さんに訳を聞くと、、昼間子供たちが学校へ行って一人になると、部屋の中に
髪を振り乱した女の幽霊が出る、というのです。
しかも、奥さんは寝言で訳の分からない不思議なことを言い始めました。
その話を聞いて初めは半信半疑だったその人も、
奥さんが殆ど病人としか思えないほどやつれはて、家事゙もできなくなるにいたって、
やっと事の重大さに気が付きました。
そして人のつてを頼って、「拝み屋」に見てもらうことにしたのです。
御払いでもしたら、奥さんも気が晴れるだろうと思ったんですね。
その拝み屋さんが言うことには・・・・・。
ご主人がいつも釣りに出かけている沼の近くに古い祠があるから、そこを綺麗にして
御供え物をするようにといい、詳しい地図まで描いてくれたのです。
その人は、そんな馬鹿なことがあるものかと、半分腹を立てながら、
それでも奥さんがこのままでは本当に病気になってしまうことを恐れて
その沼に出かけました。・・・・すると、祠は確かにあったのです。
あまりに古く、一体何を祭ってあったのかも分からないほど朽ち果てていたそうです。
拝み屋さんの言う通り祠を掃除して、花と日本酒を御供えしてからまもなく
奥さんは見違えるほど元気になりました。
ところで、その人は自分が拝み屋さんに行って、自分の家のことを見てもらったことは
奥さんには黙っていました。 やはり、恥ずかしかったんだそうです。
だから、祠を掃除したことも知らないはずなのに、
それ以来元気になったのが不思議でならならないと言っていました。
しかも、「趣味で釣りに行くことなど拝み屋は知らないはずなのになあ・・・」
とも言っていました。
それ以来、なにか、自分たちにはわからない世界があるんだなと、
少しだけ、考えを改めたということです。
では、また・・・お会いしましょう。
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