ゆうが語る、フォークロア
この話は先月行われたオフ会で、19話の語り部のSさんから聞いたものです。
今ではお店を閉め、会社を経営されているSさんの人柄に惹かれた私は、
他人の体験談も載せてもいいなと思った次第です。
実は19話を話してもらった時にSさんが昔開いていたスナックの入ったビルについて、
そのビルで起こったという様々な心霊現象や幽霊目撃談など、裏話をいろいろ
聞かせてもらいました。どうやら「出た」のは、Sさんのお店ばかりではなく
同じビル内の他所の店でもいろいろあったらしいのです。
例えば、衆人の見守る中、工事現場で働くような格好をしたヘルメットをかぶった
「おっさんの幽霊」が壁から突然出て来て消えた話とか・・・。
また、ある時は天井からじっと見詰める顔が宙に浮いていたとか・・・。
Sさんによれば、それこそ「もういいっ!飽き飽きした!」というほど様々な心霊現象が
そこでは起こったそうです。
Sさんは、あんまりたくさんその手の物を「見た」のでもううんざりしたとも言っていました。
今回お話するのは、そのSさんの知人の女性の話ですが・・・・。
これは、そんなに長い話ではありません。
ある時、Sさんの知人の女性が金縛りになりました。暗闇の中、金縛りにかかりながら
ふとドレッサーを見ると、ドレッサーの上に、「黒人」の生首が乗っていたそうです。
その「生首」は何をするわけでもなく、そこにあったそうです。
しかも「彼」(?)の顔はなかなかのハンサムだったそうで少しも怖くなかったとか。
ところが、金縛りはその時限りの一回だけではなかったのだそうです。
Sさんの知人は、その後何回も金縛りにかかり、その「黒人の生首」はその度に
出現したのだそうです。しかも・・・・。
初めはドレッサーの上にいた生首は、彼女が金縛りにかかるたびに場所を移動し、
次第に彼女が寝ているベッドのそばまで近づいてきたというのです。
ある晩のこと、また金縛りにかかった彼女の見た物は、自分の顔のすぐ傍で
並んで寝ている「黒人の生首」でした。
これでこの話は以上です。その後この人とは連絡を取っていないので彼女と
「黒人の生首」はどうなったかわからないとのことでした。いかがでしたか?
それではまたおあいしましょう・・・。
これは私が中学生の頃のことですから、かなり昔の話です。
私は当時美術部の部長をしていましたが、放課後部室で絵を描いていると二年生が
「先輩、聞いてください」といいながら部室に入って来ました。
訳を聞くと昨日の真夜中、幽霊を見たというのです。しかも、ふたりで・・・。
その話しというのは、こういうものでした。
まもなく中間テストがあるので夜遅くまで勉強していると、外から地面を叩く
規則的な音がしてきたそうです。初めは気にも留めなかったのですが、
音がなかなか止まないので窓を開けて表を見てみると・・・・。
赤いスカートをはいたおかっぱ頭の小さな女の子が、一生懸命なにか歌いながら
毬つきをしているのだそうです。時計を見るとまもなく深夜の2時・・・。
後輩はぞっとしました。その時、向かいの家の二年先輩のYさんの部屋の明かりが
まだついていたので、小さな声で「先輩、Yちゃん・・」と呼んだそうです。
(このYさんというのは、私にとってもクラブの先輩にあたり、中学生の頃からいろいろな
賞をとるなど才能あふれる物静かな知的な女性で、私の憧れの先輩です。)
彼女の呼びかけが終わらない内に、Yさんは窓を開けたのだそうですが・・・
あそこに、毬をついている小さな女の子がいるの見える?と聞くと、
Yさんはうなづきながら「さっきからもう一時間はああしてり毬つきをしているのよ」
と言ったとか。どう見ても、まだ幼稚園にあがる前ぐらいの小さな女の子が、通りの
真ん中あたりで毬つきをしているのは不自然です。しかも、深夜の2時近く。
後輩とYさんはしばらく道路で毬つきをしているその女の子を見ていましたが
その子は、こちらから見ているのに気がつかないのか相変わらず毬つきを一生懸命
しているのだそうです。
そして、その時二人とも気がついたのは、その通りのその場所にはライトがないのに
その女の子の周りだけぼうっと明るく、赤いスカートやおかっぱ頭がはっきりわかるのに
女の子の顔が見えないのです。再びぞくぞくして寒気に教われた二人は
とにかく寝ようと言って窓を閉めたそうですが、窓を閉めても聞こえてくる毬を突く音は
ずっと聞こえていたので後輩は布団をかぶって無理矢理寝たのでした。
翌朝、高校へ行くYさんと玄関で行きあった彼女は昨日のことを聞いてみました。
Yさんは今朝の、朝食の席で両親に夜中の出来事を話すと
もうずっと昔、まだYさんが生まれる前のことではあるが、近くでトラックにはねられて
死んだ小さな女の子がいたと言うことを話してくれたそうです。
その話を聞いて、私が印象に残ったことは・・・・・。
私の家では、「朝ご飯」というのに、後輩が「朝食の席」と言ったことが私には
ひどく新鮮で、真夜中で毬をつく女の子の怖さよりもそちらのほうが勝っていました。
その後、その「毬をつく小さな女の子」は何人かに目撃されたそうですが、
真偽を確かめる術は今の私にはもちろんありません。
独りぼっちで、今も毬つきをしているとしたら・・・、
いえ、そうではないことを祈りたいと私は切に願います。
それではまたおあいしましょう・・・。
まず、初めにお断りしておきますが、今回お話するのは私の経験ではありません。
今年知り合ったネットフレンドのSさんが以前体験したお話です。
この話をメールで戴いた時、Sさんは、所在地や実名を出してもかまわない・・・と
言ってくれましたが、考えた末匿名にしました。また、戴いた内容はほぼ、原文のまま
掲載しています。と、いうのもこのような経験をしたにもかかわらず、優しい心で接して
いたSさんの温かい人柄がわかるような気がしたからです。
以下は、Sさんのメールから・・・・。
当時、私は名古屋の繁華街N三丁目というところで小さなパブをやっていました。
今から、そう9年程前・・・・
店は、8席程のカウンター席と5人程座れるボックス席。細長い店内は、
入り口をあけると5人程座れるボックス席に左手にカウンターがありました。
私はもともと鈍い方なので「彼女」がいつからそこにいたのか・・・よくは知りません。
たまたま店を訪れてその席に居座ったのか、それとも、もともとその店の常連
だったのか・・・・・?
ボックス席の一番隅が、「彼女」の席です。
私は、彼女の存在をうすうすは感じていたのですが。
ある日、私はカウンターで女性客をひとり相手にしていました。
30分ぐらい経った頃、カウンターの彼女が私に
「奥のボックスの女の子相手しなくていいの?」とたずねました。
店には2人しかいないのに・・・・
ただ、不思議なことに嫌な感じはまったくなかったんです。
その時は気のせいですましたんです・・・・
同じ様なことはその後も続きました。
「彼女」の存在は、実はけっこう頻繁に目撃されていたのです。
でも、なぜか誰も怖がらなかった。
「あれ?ボックスの女の子帰っちゃったの?」なんてよく言われましたから・・・。
「髪の長い黒っぽい服着た子?」って問い掛けるとみんな
「そう、そう。」って・・。でもだれも彼女の顔を覚えていない・・・・。
「寂しいから、お客さんを呼んでくれるんだ・・・」
今にして思えば、変な話なんだけれどそう思ったんだ・・・。
事情があって店を後輩に譲ったある日、その後輩から電話がありました。
「彼女」のことでした。後輩には「彼女」のことは話してありませんでした。
「Sさん。もしかしてこの店、出る・・ってお客さんにいわれませんでした?」
「ボックスの長い髪の女の子?」
「知ってたんですか!」
そんなやり取りの後私は後輩に忠告しました。
「害は無いし、お客さんを呼んでくれるからそのままにしてあげて。」
後輩は忠告を無視して御祓いをしました。
それ以来「彼女」はいなくなったみたいです。
ほっておいてもお客のくるその店は、ちょうどその頃から経営不振に陥りました。
そして閉店・・・・・。だから言ったのに!
今、思うことは「彼女」は決して私についていたのじゃない・・・
たまたまあの席が「彼女」の席だったんだと思います。私にとっては、
大事なお客さんだったので「彼女」のことは多分忘れはしないと思います。
同じように私のお店に通ってくれていた常連さんの身を案じるのと同じように・・・・・
これが、私の経験した不思議な話です。
店の名はTO-BE(トゥ-ビ-)。
それではまたおあいしましょう・・・。
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