戒め
移ろい易い人の心を
引き止め続けて何になろうか
出会いと別れは
どちらかを見極めた時に
また訪れては 遠ざかる
さながら 人生の山と谷のように
遥か山の頂きを目指して
困難の道程を歩く
たとえそれが昨日と同じ道をなぞろうとも
繰りかえしを恐れる事はない
その中にあって
生まれいずる 痛みもまた
幻の如く
数多の涙を流したとて
その亡骸を抱えて
恐れる事は 何もない
幾重にもはばかる壁を突き破り
闇の中に出口を求めて
道に迷うのも また苦しからず
時の流れに 生まれて消えて
我が苦しみはやまず
今というこの時間が
久遠の命の輪の中の 一端を
かろうじて手にしているだけに
過ぎない事を知る
ただそれだけの事なりといえども
哀しみも 痛みも
広大無辺な時のベクトルに
いつか 知らずのうちに
癒されゆくものなりと
我は願う
我らは単に息をして吐くだけの物にあらず
生の動に
喜びを見出さずして
なんの生であろう
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