CON-tribute

インフォメーション・アバウトCONミュージック

 (2006年9月27日 コンラッド・シュニッツラー、日本語意訳:Jin)

ソロ・トラックについて

私は、コレクターである私の友人達に膨大なコレクションを注文する機会を与えるだけでなく、音楽を通してクリエイティブになってもらうことに、さらに関心がある。ソロ・トラックは特に、組み合わせて新しい音楽を作ることを可能にする。
例えば:
4人の友人が自分達のステレオの機材を持ち寄り、私のソロ・トラックを、私とは全く違うやり方でミックスする。そうすることによって、独自のコン・サート(Con-Cert)を創造することができる。

ソロ!

単一の音色、ソロ・トラック、個々の音色、独奏者、個人主義者、エゴイスト、音色、音符、色調、ピッチ、音量、ダイナミックス、リズム、多様性、ハーモニ クス、自由、モノクローム、表現、音調の、無調の、移り変わる、静的な、流動的な、ぼやけた、はっきりした、ダークな、ライトな、速い、いろいろ合わさっ た、透き通った、ズンとくる、薄っぺらい、抽象的な、形式張らない、実験的な、型にはまった、ガラスのような、金属的な、具体的な、エレクトリックな、落 ち着いた、興奮した、流れのある、リクライニングな、パーカッシブな、下向きの、上向きの、スローな、小気味よい、苦悩した、カラフルな、とりとめのな い、何とも言えない。

ソロ・ボイス − 編曲と応用

ソロ・ボイス、または、ソロ・トラック、さらにインディビデュアル・ボイスとも言われるが、それは私達西洋の音楽にはほとんど見当たらない存在と言ってい いだろう。一方、アジアでは、常に自然な習慣として取り入れられてきたものである。ここ、西洋では、少なくとも前衛的なミュージック・コンクレート以降、 自ら意識的に行なうものとしての地位を確立している。
クラッシック音楽において、一つ一つのメロディーラインは、完璧なまでにアンサンブルに従属しており、全体的な印象を整えることがその役目であるため、通常、それ自体はまったく印象を残さないでいる。
ア ブストラクト・ミュージックの到来により、インディビデュアル・ボイスは本来持っているノイズ、トーン、サウンドを取り戻した。それは、例えば立体的な音 や、様々な音響イベントに応用することも可能だ。音のエネルギーを、インディビデュアルなものとして、多用な方向に発することが出来る。騒音と呼べるもの から、かなり聴き心地のいい音色まで、音を調整することは、可能であれ不可能であれ、もっともらしいことであり、人々から許されることであり、望ましいと されることである。複数の音を重ね合わせてアンサンブルとしたり、ミックスして場を形成することにより、新しい次元を創造できる。それは、個々の音が同期 のために協調を強いられたり、指揮棒に合わせて奏でられたりすることのない音の世界だ。結果として、音楽理論にまったく固執しない音のコンビネーションが 実現する。インディビデュアル・ボイスの強みは、どんな音に対しても自由でいられるところにある。

フリー・コンサート(ミックス・ソロ)

ソロからミックスへ、メロディー・ラインからアンサンブルへと積み重ねられた音は、互いに反発することなく均等がとれており、それらの音は自由にエネル ギーが飛び交う演奏によって同時に進行していく音符の固まり(クラスター)となる。ソロ・ボイスのミックスによって生み出されるものは、音符やノイズの集 合体、絡まり合い、圧縮、音の群れ、破綻してめちゃくちゃになった音、驚異的な音響。個々の音が持つ個性は、音全体のカオスの中に吸収されていき、そこに 不鮮明な状態で存在することとなる。音楽的な展開は、アンサンブルやそのバリエーションの中で、個々の音が醸し出す雰囲気によって浮かび上がってくる形となる。音のシークエンスが溢れ出すと、音符によって形成されるタイトさやルーズさが浮き彫りとなり、それによってテンポが変わり、ボリュームや音の強弱、 そして音のパターンの移り変わりによる表現が変化していくのである。混沌とした音は明らかな変化を起こし、自ずと感じ取れるまでになってくる。不明瞭な状態のものは、ソロ・ボイスによってまとまりを持つようになるが、その結果、スカスカで未完成な作品が創り出されることになる。そこに含まれるものは、エピソードに富んだシークエンス音、環境的なものとの結びつき、他処の様式に基づくデバイス、そして自然とテクノロジーの相互作用である。
ソロ・ボイスの音響素材としての特色により、音空間の至る所で、音を構成する部品やニュアンスについて決定がなされる。ソロ・ボイスは、アンサンブルのために、その個人主義的な表現と多用さを犠牲にして、複数の音の中の音となる。

コンセプト・コンサート(コン・サート・ミックス)

4トラックのCDコンサート。ミキサー、アンプ、スピーカーで行うか、または、4チャンネルのステレオ・システムにCDプレイヤーとスピーカーを繋げる。
複数のソロ・トラックから構成されるフリー・コンサートとは異なり、ここで使われるトラック(ボイスとも言う)は、他のトラックと連携を持つようにデザインされ、形作られ、構成され、作曲される。それぞれのトラックは、互いのトラックにうまく合うように創られる。
新 しいテクノロジーによって新しい音を無限に創造できうる時代においては、音をクリアーに表現するためにも新しい技術が必要となるが、テープやCD、コン ピュータのハードディスクがその具体例といえる。過去において、私は自分のコンサートを創り出すために、昔ながらのカセットを用いたが、今はCDに録音し て、コンサートに用いることができる。それは改善された音質のおかげだ。
各トラックは音の開始点を調節しているが、秒単位で調整できるので、それによって異なる結果をもたらすことができる。個々のトラックの音量は、会場の音響に合わせて調節することとなるため、結果としてオーディエンスは、会場によって異なる音を体験することになる。

エレクトリック/メロディー/リズミック/パーカッション:/ドラマティック・エレクトロニック・ミュージック:

独立したコンストラクション、作曲(コンポジション)、そして反響音。
コンストラクションは、ソロ・トラックやフリー・コンサート、コンセプト・ コンサートとはかなり異なったものに見えるはずだ。一度テープやCDに録音したものを、後で改変することはできない。ただしマルチ・トラックでテープやコ ンピュータのディスクに録音したような場合は、わずかな編集であれば可能だろう。私が断片(ピース)と呼ぶ、正に作曲という手法によって創り出されるこれ らの曲は、ほとんどの場合、即興のように一回の操作で録音される。つまりこのやり方の場合は、どのような形であれ、中断は許されないことを意味している。 もしコンピュータがクラッシュしたり、停電でもあろうものなら、そのとき取り掛かっている断片は台無しになってしまい、まずもって録り直しは不可能だ。この、スケッチのようなアプローチが意味しているものは、レコーディングでは常に、余計なものがコンストラクション/コンポジションに残ってしまうので、取り除くことは絶対に不可能だということだ。電子機器によるエレクトリックを用いたこの方法は、伝統的な音楽や共鳴音を出す楽器で同じことをやる場合とはかなり対照的だ。エレクトリックの場合にせよアコースティックの場合にせよ、音はスピーカーから出る。共に、何かしら制約がある反面、それぞれ長所もあって、実際のところ、どちらかが優勢ということもなく、長い間、ドングリの背比べのような関係を維持している。それは、互いにとって不都合なことだ。電子機器は我々の時代に必要不可欠な道具であり、もはや今日の世の音楽やサウンドから切り離すことはできない。コンテンポラリー・ミュージックの作曲家は、作品を自分で演奏することができ、演奏家や彼等の演奏場所に掛かる費用、そして彼等の気まぐれに、もうこれ以上振り回される必要はない。アコースティックにせよエレクトリックにせよ、音楽が結果として生じるものは同じだ:
それは音響、振動、そしてサウンドである。

ピアノ コンストラクション、作曲(コンポジション)

私のピアノ作品は、当初、キーボードが付いた電子楽器を用いたものだった。私は、自分の初期のエレクトリックおよび電子音響作品を、かなり意識して「キー ボードなしのエレクトロニクス」と呼んで区別していた。その後、シンセやシーケンサーに12音階のキーボードが付いたものが発達したため、このタイプを受 け入れることにした。このような機材の中には、ピアノが出す実に様々な音色を奏でられるスタンダード・ピアノというものもあった。だいぶ経ってから、音の パターンが全体的に徐々に変化する曲想に合わせて、エレクトリック・ピアノの反復音を重ねることによって、私は初めてピアノの短いソロトラックを作るに 至った。
それ以来、ずっと88鍵を使い続けている。実は、最初は64鍵のキーボードのピアノ音を試したのだが、その後、88鍵のエレクトリック・ ピアノに乗り換えた。指先のタッチでもって直に音のニュアンスを操作できるのは、私にはまったく新しい体験で、演奏時の感覚は今までとはまったく異なるも のだった。このときのはまだ電子楽器のピアノだったが、ピアノの持つ特質は絶え間ないインスピレーションを与えてくれた。その次に、私が理想の音に一層近 づいたきっかけは、ディスクピアノだった。私が、ピアノの長いソロ・トラックをシリーズで作曲、構築したときの手法は毎回違っていた。それらのトラックを ライブで演奏、録音することがあったが、その後編集して転調したり、場合によってはテンポの修正も行なった。ライブ録音でない場合は、音符やシークエンス をコンピュータで念入りに練った後、よくシェイクしてから新しい方向性を与えるようにした。ここで再び、電子音楽において、作曲家は自身の曲の演奏者でも あることに触れておこう。ピアニスト一人では演奏しきれない程の楽譜を一気に作るのは実に簡単だ。このように伝統に捕われないサウンドが、ほとんどのクラシックのピアニストの腕を恐怖で跳ね上げさせてしまう事実はさておき。新しい手法によるあらゆる作品は、新大陸への扉である。あなたは一度88鍵を弾き出 したら、ずっとずっとずっとずっとずっとずっと、弾き続けることだろう。

Con von hinten am Mixer
ミキサーに向かうConの背中 2006年11月(写真はConさんご提供)

原文(英語):Informations bout the CON music by Conrad Schnitzler (27.9.06)

 

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