2007/03/22: コンラッド・シュニッツラーとヨゼフ・ボイスとの出逢い
ヨゼフ・ボイス(Joseph Beuys: 1921年5月12日~1986年1月23日)は、戦後最大の芸術家とまで評価されている人です。そのボイスとConさんは交流がありました。
知り合ったきっかけは、ボイスが1961年にデュッセルドルフ美術アカデミー ~ Kunstakademie Düsseldorfの彫刻科の教授に就任したときに、生徒の1人として講義に出席したことです。デュッセルドルフ美術アカデミーはボイスの母校で、Conさんの故郷もたまたまデュッセルドルフだったのも、何かの縁だったのかもしれません。ボイスは、Conさんが作った彫刻をすべて気に入ったそうです。
Conさんは、ボイスから芸術的な影響はほとんど受けなかったそうで、ボイスに対しての接し方も、先生と生徒の関係というより、共に物事を学ぶ仲間といった感覚だったようです。Conさんがベルリンに移った後も、ボイスはConさんを訪ねに来ました。Conさんが出資したクラブZodiakにもボイスは訪れています。
私は、ボイスとConさんのそれぞれの芸術には、以下のようないくつかの共通点があると見ています。
●常に変化する作風
ボイス: 温度によって変形する脂肪(!)や温めるためのフェルトといった素材をしばしば作品に用いていました。
Conさん: その瞬間、瞬間、物事は常に変化していることを好んで表現しています。
●「すべての人は芸術家」という信念
ボイス: 「すべての人は芸術家でなければならない」といったシラーの思想を礎に、社会が発展するためにはすべての人が創造的であらねばならず、そのために故意に人に刺激を与えて人間性を高めるような芸術を目指していたようです。1970年代末以降には平和政党「Die Grünen(緑の党)」に深く関わり、「社会彫刻」のキーワードに表わされるように、自らの芸術を社会にまで発展させていきました。(なお、Conさんに確認したところ、LP『Grün』は「Die Grünen(緑の党)」とは無関係だそうです。)ところで、「社会彫刻」の代表的なものとして"7000 Oaks(7000本の樫の木)"という木を植える運動がありますが、当時、西武がボイスを日本に招いて「ヨーゼフ・ボイス展」を開催するために、ギャラとして樫の木500本分を負担したことが知られています。
Conさん: ボイスと同様、「すべての人は芸術家である」という信念を持ち、インタビューにおいても「人間は刺激を与えないと駄目なんだ。」などといった発言を以前していたことがあります。
※Conさんは、その後、この考えに疑問を持つようになりました。プロのアーティストは、プロでない人とは明らかにやり方が違う、と思うようになったそうです。
●パフォーマンス
ボイス: 受け手の反応をその場で間近に感じ取ることができる芸術の一つの形態として、数多くのパフォーマンスをおこないました。例えば、「コヨーテ 私はアメリカが好き、アメリカも私が好き(1974)」では、米国のギャラリーで3日間コヨーテと暮らすパフォーマンスを行いました。米国の空港に到着後、ギャラリーまではフェルトに包まれながら救急車(!)で搬送されるという念の入りようで、要するに、コヨーテ(ネイティブ・アメリカンの象徴)がいるギャラリーの中とその行き来以外、現代の米国には一切接しないといったわけです。その他、私が気に入っているパフォーマンスの写真は、自然に囲まれた水場にボイスが服のまま首までつかり、トレードマークの帽子を被った顔が水面からちょこんと出ているといったものです。このパフォーマンスの真意は分かりませんが、水面から出た彼の表情が、日常生活となんら変わりないと言いたげなほど、あまりにも平然としているところが目を惹き付けます。(この写真は『評伝 ヨーゼフ・ボイス』(美術出版社)に掲載されています。)
Conさん: インターメディア・アートの一要素として、ギャラリー、室内、路上などでパフォーマンスを行っていたことが知られています。今日、それらの一部はビデオやDVDで見ることができます。
おまけ:
Conさんのプライベート作品「00/094 Rudel」のジャケット・カバー・アートは、ヨゼフ・ボイスの作品"Das Rudel"(1969年)の写真を加工したものです。
コンラッド・シュニッツラー「00/094 Rudel」
ヨゼフ・ボイス "Das Rudel"
ヨゼフ・ボイスについてもっと知りたい方へ:
●ヨゼフ・ボイス(Wikipedia)
●現在入手可能なお勧めの本: 菅原 教夫 (著)『ボイスから始まる』(五柳叢書)
●国内の美術館: 清里現代美術館にはヨゼフ・ボイスの日本で最大のコレクションがあるそうです。[ CON-tribute
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