市街地の中心部にあり多くの人々に親しまれている十三番慈眼寺。
ここもまた、明治11年の秩父大火により
黄檗版一切経を納めてある経蔵以外は失われた。
この蔵は六角輪堂になっており、堂内には秩父霊場を開いたとされる
伝説上の十三権者の像が祀られている。
また、阿眼薬師、飴薬師、雨薬師とも呼ばれる境内の薬師堂は
眼病平癒に霊験があるとされ、縁日にはぶっかき飴と呼ばれる飴を売る
屋台で境内は大盛況となるという。
伝説では、日本武尊が東国征伐の折りに、この地に旗を立てたところから
「旗の下」と呼ばれ、それが転じて「はけのした」となったといわれている。
さらに江戸時代の庶民の篤い秩父観音信仰を物語る逸話として
明暦の大火に遭い九死に一生を得た娘の実家がこの慈眼寺の檀徒だったことから、
当時の絵草紙にも描かれ江戸中の評判となったというものがある。
「観音霊験記・火災の利益(かざいのりやく)」
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十三番 旗下山 慈眼寺 曹洞宗 【ご本尊】聖観世音菩薩 【御詠歌】御手に持つ 蓮のははき残りなく 浮き世の塵を はけよ下寺 【所在地】秩父市野坂町2-12-25
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◆市街地にあって親しまれているお寺◆
十三番慈眼寺は、十二番札所からは徒歩20分余りと比較的近い。
まもなく午後も4時になろうとしているので、マメの出来てしまった痛む足をあやしつつ
先を急いだ。もしかしたら、このお寺で今日は終わりかもしれないと思う。
このお寺は西武鉄道「西武秩父」から徒歩5分、または秩父鉄道「お花畑」より徒歩2分と
駅からも近く、市街地にあって親しまれているお寺という感じを受けた。
山門の脇に地蔵堂があり、仏様が道行く人を見つめている。
車道に面しているためか人の往来も激しく、私たちより先に十二番を出た巡礼の
男の人二人連れがもう帰るところに行き会った。軽く会釈しながらすれ違う。
この人たちとはどういわけか途中の道では一緒になることはないのだが、何故か
お寺の中で何度も行き会った。
おそらく別のルートで歩いているのであろうがどこを通ったのかな。。
私たちが山門をくぐろうとすると、団体さんのバスがかなり急いでやって来た様子で
バスを止めたと思ったら、たくさんの巡礼の人がバスから降りてきた。
背中を押されるような感じで私は中に入った。
◆境内は狭いけれど見所はたくさん◆
団体さんが読経をするよりも早く私たちは先に納経を済ませたが、ここの薬師如来様は
眼病に霊験あらたかということで、ドライアイとアレルギーで去年から困っている私としては
ここは是非ともご縁を戴きたいものだと思って一生懸命手を合わせてお経をあげた。
お薬師様には今まで随分と助けられている私だから、ついつい感情がこもる。
お薬師様には家の飼い猫のルナでさえお世話になっているのだ。
野良時代のルナ、当時生後推定八ヶ月。
病気で神社を徘徊している時に保護されて、家にもらわれてきた時のルナは
体の小さな弱々しい仔猫だった。
激しく痙攣して獣医さんに往診してもらったこともある。
元野良だから警戒心が強く、家に来た当初は全く懐くどころか殆ど固まっていた。
それでも既にルナに愛情を感じていた私は、心音が不安定で心臓に欠陥があるかもしれないと
言われたときは衝撃を受けたものである。
私は毎日暇さえあれば、お薬師様の真言を唱えつつルナを撫でていたものであるが・・・
それが今では5キロはゆうに超すであろう大猫に育ってしまい、廊下を爆走している。
そんなわけで、お薬師様は私の身近な仏様なのである。
さて、薬師堂と並んだ六角輪堂の中には一切経が納められていて、堂内を三度廻ると
そのお経を読んだのと同じ功徳があるのだそうだ。
じんが中にあがって廻っているがすぐに出てきた。
なんか、フェアじゃない気がするという。そういえば、じんは同じ理由で余所のお寺にあった
マニ車も回さなかった。私は、無論触って回してみる。回さない理由は私の中にないからである。
境内には比較的広々とした納経所を兼ねた売店があって、ここには巡礼の装束一式や
書籍、お土産などが並んでいる。
眼病に効くというお守りもあった。目薬の木のお茶も試飲販売している。
ドライアイに苦しんでいた私は実は目薬の木の錠剤をネット通販で取り寄せて
試してみたのだが、高価なだけでこれといって特に自分としては馴染まないかなと
いう気がしてまだ少し家にある。
ただ、ありとあらゆる事をしたので何が効いているのかわけがわからなくなっている
というのが正直なところであるが、徐々に良くはなっているので無駄ではなかった。
その大きく葉を茂らせた目薬の木が境内にあった。
細い幹なのになんと大きく枝葉を広げているのだろう。
これはカエデ科で秋には紅葉するからそれは面白い姿だろうなと思った。
さて、札所の納経受付終了時間までは後20分しかない。
ここで1分ほど大いに迷ったが、14番のお寺までとりあえず行ってみることにした。
私は疲れていたけれど奮起して歩き始める事にする。
間に合うか、間に合わないか・・・。
とにかく歩いてみよう。
●境内に植えてあった「目薬の木」別名「チョウジャノキ」「ミツバナ」とも。
日本特産のカエデ科の落葉高木でこの小枝や樹皮を煎じて飲む
実物を見るのは初めてなので見とれしまう。