◆SUMMER〜なつ〜◆
No.1 わかれ
その日の朝
彼は夢の世界に行ったまま
永遠に戻ってはこなかった
二人で過ごしたほんのわずかな
昨日までの想い出を携えて
ただひとり、なんの断りもなく
それは突然に。
カーテンの隙間から
真夏の光が彼の寝顔に
まるで祝福を授けるかのように
さしんでいた
彼の薄く開いた唇からは
おはようの言葉もなく
ただ微笑みを浮かべたまま
私の知らない世界に
行ってしまった
たったひとりで 私を置いて。
たくさんの空白を残したまま
突然閉じられたアルバムは
主を失った哀しみを知ることもなく
時間は相変わらずまわっていくのだろう
これから先たくさんの
熱い記憶が閉じ込められるはずだった
ことも知らずに。
早すぎる旅立ちに
取り残された私は
ただ、優しくあやしてくれる人を求めて
彷徨の果てに
辿り着いたのは・・・
彼とすごしたわずかな想い出と
記憶のかけらを
繋ぎあわせる自分の姿が
虚しく映るだけの部屋だった
でも 想い出の断片は
あたりまえのように流れていた時の中で
容赦なく私を打ちのめしたけれど
いつしか 苦痛さえも ときめきを伴って
優しく彼のいた場所に
そっと降り積もっていった
いつかどこかで もしも
再び出会えたら
私は彼に伝えるために
自分の足でしっかりと立っていこう
あれからの私がこんなに強く
あなたの想い出に支えられて
生きた来たということを
そして、哀しみだけではなく
あなたに出会えた喜びもまた
知ったということを
いつか彼に聞いてもらうために
歩いていくのだ
私は私の決められた時間を
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Copyright(C), 1998, 1999
Yuki.
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